子どもの難聴に関するQ&A

よくあるご質問をまとめました。


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監修:医療法人さくら会 早島クリニック
耳鼻咽喉科皮膚科 理事長 院長 
福島 邦博 先生

Q、補聴器は何歳から装用すべきですか?
A、補聴器は赤ちゃんにも装用できます。最近は新生児聴覚スクリーニングを受けて乳児期早期に難聴が診断されることが多く、生後数か月から補聴器装用を行う例が増えてきました。「よりよく聞こえていること」は難聴の子供たちのすこやかな言葉の発達にはとても大切です。難聴の診断が確かなら赤ちゃんでも補聴器をつけることができますから、補聴器装用を進めていきましょう。

Q、人工内耳と補聴器、どのような基準で選べばよいですか?
A、
一般に人工内耳は、補聴器の装用効果が乏しい場合に適応となります。現在は身体障害者の手帳をお持ちの場合、聴覚障害の2~3級の方が相当します。お子さんに対しての適応の基準はこちらにあります。

【日本耳鼻咽喉科学会ウェブサイト】
https://www.jibika.or.jp/modules/hearingloss/index.php?content_id=6

お子さんの状況によって、あるいは時代によって、どのような基準で人工内耳が必要になるかは変わってきます。まずは人工内耳を取り扱う医療機関で相談してみましょう。

(参考)人工内耳の地域別病院情報 人工内耳友の会[ACITA]ウェブサイト www.normanet.ne.jp/~acita/hospital/hospital.pdf

Q、こどもは先天性難聴です。できるだけ正しい発音を身に付けさせることは可能ですか?
A、
難聴児の場合、早期に補聴器を装用してよりクリアな音を聞き、また自分のしゃべる音と聞き比べて修正することが適切な発音(構音)の発達につながります。したがって補聴器のより良い聞こえを確保することはまず大切ですが、それでも難しい構音が残る場合には、正しい構音の作り方を学ぶことで改善することもできます。構音のための専門的な指導は言語聴覚士から受けることができます。地域によっては通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校、病院、通園施設などで指導を受けることができます。構音には「慣れ」が必要で、練習には時間がかかるかもしれません。周囲が褒めて励まし、温かい目で応援することが大切です。

Q、できるだけ目立たない補聴器がいいのですが、こどもに小さな耳あな型を選んでもいいですか?
A、成長によって耳あなの大きさが変化します。耳型を取ってオーダーメイドで作る耳あな型より、耳の大きさに関係のない耳かけ型のほうが頻繁な買い替えが必要ありません。こうした理由から、一般的にはまだ耳の成長の度合いが著しい小さなお子さんには耳かけ型の補聴器を勧められることが一般的です。

耳かけ型補聴器では、耳栓だけをオーダーメード(イヤーモールド)にして耳の成長に合わせます。イヤーモールドは比較的安価で、また補助の対象になる場合があります。お子さんの耳の大きさの成長と共に取り換えることで、ピーピーとなるハウリングを抑えるだけでなく、補聴器の装用が安定します。

Q、補聴器を装用しはじめた重度難聴のこども。親がすべきことは何でしょうか?
A、
楽しく一緒にお話しすることは、お子さんの心とことばの成長に大切です。補聴器を使いながら楽しいおしゃべりの時間を過ごしてください。

  • お子さんの顔を見て話してください。楽しい表情・悲しい表情等、声のトーンと一緒に表情豊かにお話しすることが大切です。
  • 体に触れて話し始めるサインを送りましょう。聞くことに注意を払うきっかけになります。
  • 本の読み聞かせは大切です。お話しの筋を追うだけじゃなくて、挿絵や最近の出来事等から話題を膨らませながらお話ししましょう。
  • 実際にお子さんと一緒に見て、聞いて、触って操作しながら体験しましょう。体験した「心の動き」を言葉に置き換えて感想を語り合うことも大切です。心が動くとき(楽しい うれしい かなしい等)は、様々な学習を進める絶好のチャンスです。お子さんと一緒にたくさんの感動を経験すること、そしてそれを語り合うことが一番大切なことです。
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Q、こどもが一般の保育園に入園します。補聴器を装用していることで気をつけること、周囲に伝えることはありますか?
A、まず、生活習慣などお子さんのできることを園の先生方とお話し合ってみてください。その上で、聞こえのことで配慮してもらえると助かることを具体的に説明します。経験したことのない難聴児への対応に先生方も不安に思っているものです。お子さんのできることや、配慮する範囲が明確にわかると周囲の不安感は小さくなり,配慮の輪が広がりやすくなります。園の行事や保護者の集まりにはできるだけ参加し、会話の中でお子さんの補聴器のこと、聞こえのことを素直に話すようにしてみてください。他の保護者の理解も広がっていくと思います。具体的な説明に役に立つ資料は下記でも入手できます。

【難聴児童生徒へのきこえの支援 補聴器・人工内耳を使っている児童生徒のために(財団法人日本学校保健会)】
www.gakkohoken.jp/uploads/books/photos/a00035a4d8026657a6b6.pdf

Q、小学校入学を前に、軽度難聴だと診断を受けました。特に聞こえに問題を感じませんが、学校生活は大丈夫ですか?
A、
家庭では本人との距離が近いため、聞きにくい状況に気づきにくいことがあります。口元や状況を見て聞こえを補っていることもあります。
小学校に入学すると集団生活が始まります。声を聞くべき先生は、常に近くにいるとは限りません。授業ではグループ学習も増えており、騒がしい環境の中でランダムに話す友だちの声を聞き取らなくてはなりません。高学年では英語の授業や抽象的な概念に関する授業もあるので、耳慣れない言葉を聞き取って活用する機会も増えています。
さらに、学年が進むにつれて、授業の中では「聞く」だけではなく、「聞きながら考える」場面も増えていきます。聞こえは補聴器で補ってあげると、覚えること、考えることにエネルギーを集中させることができます。学ぶことが楽しいという環境づくりのためにも、補聴器の装用をお勧めします。騒音の中での聞き取りにはロジャーが役に立つこともあります。

Q、片方の耳だけが難聴です。小学校入学ですが授業についていけるか不安です。片方の耳だけでも聞こえは大丈夫でしょうか?
A、
片耳の難聴では、両耳の難聴と異なり、全体的なことばの発達には大きな影響が見られないことが普通です。
しかし、特に騒音がある場所で、聞こえない側から話しかけられると、聞き取りが極端に困難になることがあります。また音のする方向がわかりづらいので、呼びかけや、危険音に気が付きにくいこともあります。教室は思っている以上に騒がしい所です(給食の時間の騒音を想像してみてください)し、またランダムに場所が変わる音源からの声を聞き取る(国語の授業で誰があてられるかわかりますか?)にはかなり集中力が必要になります。
こうした特に教室内での学習や、コミュニケーション場面での聞き取りにくさをカバーするためには、クロス補聴システムや騒音下での聞こえを助けてくれる補聴援助システム(ロジャー等)の使用が役に立つ時があります。医師、言語聴覚士、お近くの補聴器専門店でご相談ください。

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フォナックの きこえのブログ にも様々な事例や機器を使用する際のヒントを掲載しています。