難聴と子ども

聴覚技術がコミュニケーションをお手伝い

子どもと難聴

難聴は、出生1000人あたり1〜4人の乳幼児に発生しています1。この数値は、変動性難聴(耳の感染症に起因)と一側性(片側性)の難聴者を含めると、はるかに大きくなります。

親として、子どもの難聴について自分自身の知識を高めることは、お子さまの将来のために最善の決定を下すための最初のステップです。お子さまの人生の早い段階で行動することが非常に大切です。

耳は脳への入口

私たちは耳で聞いていると考えがちですが、実際には脳で聞いています2。耳とは、置かれた環境から生の音を取り込んで脳に送り、聴覚情報を処理して意味を与える構造のことを指します。このように、私たちの耳は、聴覚が実際に発生する脳への「入口」と考えることができます。

難聴の子どもには「入口の問題」があります。軽度であれ重度であれ、片側であれ両側であれ、障害があるということは、音は耳の出入口を通り抜けて本来の脳に届かないことを意味します。

音を耳に届ける方法

子どもの耳は独特です。 左右の耳でも形や大きさが違います。 耳には、外耳、中耳、内耳の3つの主要部分があります。

音は外耳に取り込まれ、外耳道から鼓膜まで伝わり、鼓膜が振動します。 振動は中耳の小さな骨に伝わり、内耳に到達する前に音の音量が大きくなります。

内耳では、小さな有毛細胞が動き、化学物質を放出して聴覚神経に電気信号を脳に送るように伝えます。電気信号が脳に到達すると、意味のある音に変換されます3

脳は音から意味を作る場所

人生の最初の数年間では、脳の発達は急速で複雑であり、子どもの感覚によって取り入れられるすべての新しい経験が、様々な結合と神経経路を作り出します。繰り返しの行動はこれらの経路を強化するために不可欠であり、聴覚の場合、言葉と音を繰り返すことで子どもの脳の発達が助けられます。

子どもの難聴は、なぜ早期の行動が重要?

難聴の子どもにとって、音は本来のように脳に届きません。したがって、難聴の子どもは音が聞こえないだけでなく、発達に非常に重要な神経経路を発達させる機会を逃してしまいます。

生まれる数週間前にすでに聴力を開始しているので、赤ちゃんの聴力損失はさらに差し迫っています4。 したがって、難聴の新生児は出生時に神経経路の通常の発達の数週間をすでに失っているため、より緊急にアクションを起こす必要があります。

お子さま向け補聴器

補聴器やワイヤレスマイクなどの機器は、閉塞した出入口を補うことにより、聴覚情報を脳にうまく届けることを技術目標にしています。私たちフォナックは、聴覚技術は「入口」を開く装置だと考えています。

お子さま向け補聴器について詳しくはこちら

会話が人間関係を築く

会話で溢れる世界に触れられるようにすることで、子どもは最良の生活を送る(遊び、人と交流し、学び、コミュニケーションを取り、最終的には成功する)ために必要となる関係や能力を構築することができます。

強固な関係があれば、子どもは自分の世界を理解し、脳の構造を強化させ、コミュニケーションや社会的技能の発達を支援することができます5

サーブとリターンの力

ことばのやり取りや会話は、こういった重要な関係の基礎となり、「サーブとリターン」として知られています。このようなやり取りは、神経連絡を刺激し、脳の構造を形成し、コミュニケーション能力や社会的技能の発達を支援するというような利点にあふれています5 。こういったやり取りが子供の好奇心を促し、子どもは自分の世界を理解できるようになるのです。

量も質も重要

子どもが触れる単語や会話の数は脳の発達に影響し、語彙の発達や学業の成果を促進します6,7 。幼いユーザーは、音声言語や読み書きの能力を伸ばすために、何百万もの言葉や何千時間もの聴き取りを経験することが必要になります6,8

重要なのは会話の数だけではありません。会話に使用される言語の多様性と複雑性、そしてお子さまがそれをどの程度明瞭に聞くことができるかも重要なのです9

なぜすべての音が大切なのでしょうか?

聴き取りや音声言語(LSL)でお子さまにとって成果があることをお望みになる場合、様々な音に触れさせることが非常に大切です。幼いユーザーが、音声言語や読み書きの能力を伸ばすために、何百万もの言葉や何千時間もの聴き取りを経験することが必要になります。

ある研究では、幼少期から可能な限りの明瞭な音を聞くことで、子どもの健全な発話能力、言語能力や社会性が発達する可能性が最大になる、と示されています2

どんな会話も重要

 

1.お子さまがコミュニケーションを取ろうとするサインを見つけ、それに適切に対応しましょう。

Phonak Tennis Illustration
 

「サーブ」には小さな赤ちゃんが手を動かしたり、幼児が指さしたり、またはもう少し大きくなった子どもが「どうして?」と聞くと言ったあらゆるコミュニケーションの努力が含まれます。「リターン」は適切な応答です。微笑むことであったり、表情であったり、または言葉であったりします。サーブをリターンすると、お子さまは自分の考えていることや感情が受け取られた、理解された、とわかるのです。

 

2.お子さまに質問を投げかけ、時間をかけて話を聞きましょう。

問いかけをすることで、お子さまは積極的に参加するようになります。そして親が積極的に聞こうとすれば、お子さまを受け入れることになり、2人の間の絆が強くなります。豊かなバラエティある語彙を使用し、問いかけによってお子さまの想像力を刺激することで、こういったやり取りを最大限に活用できます。

 
Boy with toy and dad
 

3.サーブとリターンのやり取りを日課に組み込みましょう。

OCHL_Study_Outcomes_Illustration
 

日課こそサーブとリターンのやり取りを増やす絶好の機会です。たとえばオムツを変えるときや学校の送迎時など、日課の中で意識的に会話を行うようにします。そうすることで会話が自然なコミュニケーション手段となり、お子さまは一日中有意義なやり取りができるようになります。

 

4.会話を見逃さないようにしましょう。

あらゆる状況で明瞭で豊かな音に触れられるようにすれば、お子さまは会話や絆を深める機会を見逃さなくなります。お子さまに必要なのは以下のようなものです。

  • 起きている間ずっと装用していられる補聴器
  • 大きな騒音下や離れたところでのロジャーマイクロホン技術6の使用
  • 耳障りな雑音の排除(ラジオを消す、窓を閉めるなど)
 
Illustation_roger_bar_cmyk
 

子どもの難聴

お子さまが着実に「リターン」をしない(または周りの音や親のことばに適切に反応しない)のは、ちゃんと聞いていないからであることもあります。とはいえ、「リターン」に一貫性がない場合は、正常な聴力がない兆候かもしれません。お子さまの行動の変化に注目し、聴覚障害を示す手がかりとなるものがないか、確めてください。

難聴の兆候、種類および原因

子どもの聴力検査

お子さまの聞こえは様々な手法で検査可能です。聴力検査の主な目的は、難聴の重症度と種類を判断することです。

子どもに実施可能な聴力検査

子どもを救う方法

補聴器技術のおかげで、難聴の子どもたちの未来はかつてないほど明るくなってきています。フォナックのお子さま向け補聴器スカイ ルミティは、言葉を理解するためのこども専用設計を採用しています。騒音下や遠距離など特に聞き取りが難しい状況においては、ロジャーが音声理解をさらに向上させ10、会話力を向上させることができます11,12

難聴があるお子さまの支援

子どもの難聴に関する Q&A

お子さまの難聴に関するよくあるご質問をまとめました。

●監修:
医療法人さくら会 早島クリニック
耳鼻咽喉科皮膚科 理事長
院長 福島 邦博 先生

子どもの難聴に関するQ&A

ロジャーの技術を使用すれば、子どもは1日8時間の間に5,300語以上に接することができます10 。また、補聴器だけを使用する場合と比較して、子どもに向けられて発せられたことばを12%多く聞くことができます11

一緒に、お子さまの人生を変えるお手伝いをします。

フォナックは、子どもたちの聞こえのニーズと、子どもたちが周囲のすべての音に最適な形で触れさせてあげることの大切さを深く理解しています。フォナックは、小児言語聴覚学分野で50年以上にわたり蓄積されてきた専門知識を有し、第一線で活躍する小児専門医、聴覚の専門家、教師の方々と密接に連携し、次世代のための革新的で総合的なソリューションを生み出しています。

SNSでフォナック最新情報を発信しています

フォナック補聴器アカウントにて、お子さまの聞こえに関する最新トピック、ロジャーや補聴器の使用例、フォナックの製品情報などを随時発信しています。ぜひフォローのうえご覧ください。

参考文献

1 American Speech-Language-Hearing Association. Causes of Hearing Loss in Children. Retrieved from https://www.asha.org/public/hearing/Causes-of-Hearing-Loss-in-Children/.
2 Flexer, Carol (2018). The ears are doorways to the brain. Phonak Insight, retrieved from www.phonakpro.com/evidence, accessed February 19th, 2018.
3 National Institute on Deafness and Other Communication Disorders (NIDCD). How Do We Hear? Retrieved from https://www.nidcd.nih.gov/health/how-do-we-hear
4 Mayoclinic. Pregnancy week by week. Retrieved from https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/pregnancy-week-by-week/in-depth/fetal-development/art-20046151

5 National Scientific Council on the Developing Child. (2004). Brain architecture. Retrieved from https://developingchild.harvard.edu/science/key-concepts/brain-architecture/, accessed August 19th, 2019.
6 Hart, B., & Risley T. R. (1995). Meaningful differences in the everyday experience of young American children. Paul H Brookes Publishing.
7 Romeo, R. R., Leonard, J. A., Robinson, S. T., West, M. R., Mackey, A. P., Rowe, M. L., & Gabrieli, J. D. E. (2018). Beyond the 30-million-word gap: Children’s conversational exposure is associated with language-related brain function. Psychological Science, 29(5), 700-710.
8 Dehaene, S. (2009). Reading in the Brain: The Science and Evolution of a Human Invention. Viking.
9 Hurtado, N., Marchmann, V. A., & Fernald, A. (2008). Does input influence uptake? Links between maternal talk, processing speed and vocabulary size in Spanish-learning children. Developmental Science, 11(6), 31-39.
10 Thibodeau, L. (2014). Comparison of speech recognition with adaptive digital and FM wireless technology by listeners who use hearing aids. American Journal of Audiology 23(2), 201-210.
11 Benitez-Barrera, C.R., Angley G., & Tharpe, A.M. (2018). Remote microphone system use at home: Impact on caregiver talk. Journal of Speech, Language and Hearing Research, Vol. 61, 399-409.
12 Benítez-Barrera, C., Thompson, E., Angley, G., Woynaroski, T., & Tharpe, A.M. (2019). Remote Microphone System Use at Home: Impact on Child-Directed Speech. Journal of Speech Hearing Language Research, 62(6): 1-7.